ひきこもりとBI

2011年08月13日

「ひきこもりとBI」

下の文章は、ベーシックインカム・実現を探る会の
「BIメールニュースNo.111  2011.8.13発行 」からの転載です。

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【1】ひきこもりとBI
                                 勝山 実
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 ひきこもりだとか、ニートだとか、そういう人達に就労訓練をほどこして、就職
させようという支援を、国がお金をかけてずっとやっています。

 大不況で就職口が少ない。それに加えて、地震、津波、原発事故で、大学新卒の
人ですら就職に困っているのです。ひきこもりに就労訓練をさせたところで、失業
者になるだけ。そもそも、どんなに訓練しても履歴書の職歴は空欄のままですし、
未経験者という採用する側から見て少しも魅力を感じない人材であることに変化は
ありません。若者自立塾のように、施設に閉じ込めて、職業訓練をしてひきこもり
を働けるようにすれば、ひきこもり問題が解決するという発想そのものが間違って
いるのです。

 なぜこんな間違った支援がだらだらと10年以上も続いているのか。原因のひとつ
は、お金の流れだと思います。ひきこもり支援団体の収入がどこから来ているのか
と言うと、国からの助成金です。これは規模の小さい公共事業ですよ。ひきこもり
という小さな分野にも、ゼネコンのように国のお金にたかって暮らしている人たち
がいるのです。

 ひきこもり支援団体の代表者とその家族を養うためだけに、今のひきこもり支援
は存在している。そして、無数のひきこもり支援団体が日本中に存在しているので
す。けしからんと、口で批判するのは簡単ですが、地元で自分がなんとか入れそう
な就職先が、このひきこもり支援団体の職員しかないとしたらどうでしょう。お金
がないと一日として生きていけない都会生活で、潔癖であり続けることが出来るで
しょうか。原発村だけではない、ひきこもり村も、相当生臭いものになっているの
です。

 もしベーシックインカム(BI)が導入され、この生臭い助成金を廃止することが出
来たのなら、このお金の流れを大きく変えることができます。ひきこもりの支援団
体は、ひきこもり本人や家族からの賛助金で運営されるようになるでしょう。今ま
で一文無しだったひきこもり本人と、その貧乏な家族が、必要な支援に対し、お金
を払うことが出来るようになるからです。

 現状では、ひきこもりとその家族には、支援に対して意思表示が出来ません。
「選挙権」がないようなものです。ほとんどの、ひきこもり支援業者は当事者に背
を向け、国からの助成金をいかに引き出すかということに力を注いでいます。そう
しないと経営が成り立たないからです。
 
 更に残念なことに、国はひきこもり本人が望んでいる支援を理解していません。
考えてみれば当然のことで、ストレートに学校を卒業し、上級公務員になった人間
に、底辺の人々の心情が理解できるはずもない。彼らにとってひきこもりとはGDP
を下げる、数字でしかありません。

 ひきこもりのことは、ひきこもりが一番良くわかっている。何が必要で、何が不
要なのか、ひとつの無駄もなくお金を有効に使うには、国が支援団体に助成金を出
すというやり方でなく、BIとしてひきこもり本人(というか全ての人)にお金を渡し、
ひきこもり本人が、自分自身が生き延びるために絶対に必要な支援に対し、責任を
持ってお金を払い、正しい支援団体を支持・運営していくというやり方がよいでし
ょう。


<勝山 実 氏 プロフィール>
1971年神奈川県生まれ
ひきこもり歴20年の著者による、全国160万人のひきこもりと、その予備軍のため
の実践的ひきこもりマニュアルとして本年7月末に出版された『安心ひきこもりラ
イフ』が話題を呼んでいる。



ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/

soranimukatte_23 at 16:03|PermalinkComments(0)