『YELL』「未だ始まり」

2011年08月07日

「賃金奴隷からの解放」

下の文章は、ベーシックインカム・実現を探る会の
「BIメールニュースNo.110  2011.8.7発行」からの転載です。

───────────────────────────────────
【1】賃金奴隷からの解放
        ベーシックインカム・実現を探る会 主任研究員  古山 明男
───────────────────────────────────

 人間は商品ではありません。人間が商品として売買されるならば、奴隷です。
 しかし、人間が賃労働によってしか生きられないことは、人間を奴隷の立場に貶
めているのではないでしょうか。生きるためには、自分の労働力を商品にして売る
しかないのです。それは賃金奴隷と呼んだらいい立場です。

「私は商品ではない。売り買いされる存在ではない」

 それは、現代に生きる我々の、深い叫びだと思います。我々は教育を受けて自分
によいレッテルを貼り、会社に自分を買ってもらいます。しかし、学校にも会社に
も、「私は商品ではない」という深い叫びが渦巻いているように思います。

 もちろん我々は、古代の奴隷とは違います。どんな職業でも辞めることができま
すし、住居を変えることもできます。他人が私を売買することはありません。しか
し、私は自分で自分を売るしかないのです。目に見える鎖が目に見えない鎖に置き
換わりました。

 奴隷制度がまったく疑われなかった時代があります。ギリシャやローマの人たち
は、奴隷制を疑っていませんでした。それと同じように、現代人は、賃労働を疑っ
ていません。それが、どれほど人間を奴隷的にしてしまうかに、気づいていないの
です。

 ベーシック・インカムは深い変化を社会にもたらします。無条件の最低生活費が
あれば、「食うためには耐えるしかない」労働は消滅します。我々は、賃金奴隷の
立場から解放されるのです。

 ベーシック・インカムは救貧ではありません。そこが重要なところです。賃金奴
隷の制度を残したまま働けなくなった奴隷を救おうというのではありません。賃金
奴隷そのものをなくしてしまおうということなのです。だから、所得制限を設けな
いのです。

 商品として作られたものだけが売買されるべきです。人間は、商品として作られ
たのではありません。ベーシック・インカムが実現した社会では、人々は自分を売
らなくなるでしょう。人々は自分が作ったものを売るようになるでしょう。売るの
は、目に見えるモノではなく無形のサービスかもしれません。しかしそれは労働力
を売っているのとは違うのです。

 労働はより自発的になります。そして、「稼ぐため」よりも自分と社会にとって
何が有益であるかの洞察から労働するようになるでしょう。人々は、エゴイズムよ
り同胞愛で生きるようになるでしょう。

 もちろん、すべての人がただちにそうなるということではありません。いったん
ぐうたら生活を始める人たちもいるでしょう。しかし、奴隷的ではない労働のおも
しろさは、しだいに人々から人々に伝わっていくでしょう。


<古山明男 氏 プロフィール>
教育、社会問題を研究。

2009年7月12日の当会主催の勉強会で「ベーシック・インカムのある社会」を講演。
講演録
http://bijp.net/transcript/article/91
http://bijp.net/transcript/article/98


ベーシックインカム・実現を探る会
http://bijp.net/

soranimukatte_23 at 13:07│Comments(0) ベーシックインカム 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
『YELL』「未だ始まり」